2012年1月7日土曜日

約束

著:石田衣良

石田衣良さんは、私が大好きな作家さんの一人です。
私にとって、元気がなくなったとき、悩んだときにこれを読むと背中を押してもらえる、と思える短編は石田衣良さんのものが多いのです。

多分今後も何冊か石田衣良さんの本の感想を書くことになると思います。ご了承を!
この本は「back to life」をテーマにした短編集です。先日ブックオフで見かけて、久しぶりに読みたいな、と思って購入しました。
7つの短編の中から、私が気に入ってる3作品の感想を書きたいと思います。

表題作である「約束」は、スーパーマンみたいな男の子と、その友達の男の子のお話です。
2001年の池田小学校事件を題材にしたお話です。目の前でヒーローのような親友が、自分を守ろうとして亡くなった。
残された人間の苦しみ、それでも前を向いて生きる大切さが丁寧に描かれていると思います。
あとがきに石田衣良さんご本人が書かれている通り、最初の1行の重さは大きいです。

2つめは、「冬のライダー」という作品です。
モトクロスが上手くならなくて悩む青年と、辛口にアドバイスする女性が出てきます。
最初は2人ともネガティブだったり、後ろ向きだったりしますが、
モトクロスの指導を通じて終盤にはしゃんと前を向いて、いい表情している…んじゃないかなーと思っています。
「おじさん、かっこいいカモだね」という台詞に、すっきりとした気分になれるのはこの作品くらいです、多分。

3つめは、「夕日へ続く道」です。
不登校の少年と、廃品回収のおじいさんの話で、このおじいさんがカッコイイ!
人の温かさに触れられる話です。私もこんな大人になれたらいいなと思いました。
赤の他人から、こんな信頼が築けるような2人の関係が素直に羨ましいです。

誰もがいろんな形で苦しみを抱えているけど、前を向けばちゃんと道は広がっているんだと感じさせてくれる短編集です。
壁にぶち当たった時に読みたい1冊でした。

(おじょー)

ミッキーマウスの憂鬱

著:松岡圭祐

私がこの本に出会ったのは、2年程前の話です。
その時は観光学部に入ることなんて考えたこともなく、学校帰りに寄った本屋で見たポップが印象的で、記憶に残っています。

私の周りには将来キャストになりたいといっていた友人や、隠れミッキーを探すためだけにディズニーランドに行く友人など、ディズニーランド好きがたくさんいます。
観光学部に入って、テーマパークの見方が変わった気がします。これを機会に、この本を読んでみたいな、と思いました。

この本を読み始めた当初は、「あれ?これ、ディズニーランドの話だよね?」と思いながら読んでいました。
空回りしてしまう主人公、正社員と準社員という格差の中で悩む登場人物の姿に、夢の国のイメージから大きくかけ離れたものを感じたからです。
着ぐるみ一つで従業員に重圧をかけて、追い込んでしまう重役の姿には、「え?夢の国なのにこんなにどろどろしてるのか!?」と思ったほどです。
「中の人などいない」精神の徹底や、クラブ33のぬいぐるみの配置の話など、クスッとしてしまうエピソードもあって、読み応えがありました。
終盤は疾走感がすごくあって、手に汗握るクライマックス。ミッキーマウスの中の人がかっこよすぎです。
主人公の成長とともに、仕事ってなんだろう、お客様を迎えることってなんだろう、と考えさせられる終わり方だったと思います。

なにせ超秘密主義のディズニーランドなので、どこまでがフィクションなのか私にはわかりませんが、1つの世界観を作り上げるために、
これだけの人が裏で頑張っているということは共通していると思います。
着ぐるみの行方だけでこんなドラマが生まれる、着ぐるみ一つで大事件になる、夢の世界は、想像以上に精密で厳しい世界でした。
あとがきによると作者の方は、ほかにもさまざまな観光地を題材にして小説を書かれているそうです。
ほかの作品もぜひ拝見したいと思います。

(おじょー)