2012年1月7日土曜日

ミッキーマウスの憂鬱

著:松岡圭祐

私がこの本に出会ったのは、2年程前の話です。
その時は観光学部に入ることなんて考えたこともなく、学校帰りに寄った本屋で見たポップが印象的で、記憶に残っています。

私の周りには将来キャストになりたいといっていた友人や、隠れミッキーを探すためだけにディズニーランドに行く友人など、ディズニーランド好きがたくさんいます。
観光学部に入って、テーマパークの見方が変わった気がします。これを機会に、この本を読んでみたいな、と思いました。

この本を読み始めた当初は、「あれ?これ、ディズニーランドの話だよね?」と思いながら読んでいました。
空回りしてしまう主人公、正社員と準社員という格差の中で悩む登場人物の姿に、夢の国のイメージから大きくかけ離れたものを感じたからです。
着ぐるみ一つで従業員に重圧をかけて、追い込んでしまう重役の姿には、「え?夢の国なのにこんなにどろどろしてるのか!?」と思ったほどです。
「中の人などいない」精神の徹底や、クラブ33のぬいぐるみの配置の話など、クスッとしてしまうエピソードもあって、読み応えがありました。
終盤は疾走感がすごくあって、手に汗握るクライマックス。ミッキーマウスの中の人がかっこよすぎです。
主人公の成長とともに、仕事ってなんだろう、お客様を迎えることってなんだろう、と考えさせられる終わり方だったと思います。

なにせ超秘密主義のディズニーランドなので、どこまでがフィクションなのか私にはわかりませんが、1つの世界観を作り上げるために、
これだけの人が裏で頑張っているということは共通していると思います。
着ぐるみの行方だけでこんなドラマが生まれる、着ぐるみ一つで大事件になる、夢の世界は、想像以上に精密で厳しい世界でした。
あとがきによると作者の方は、ほかにもさまざまな観光地を題材にして小説を書かれているそうです。
ほかの作品もぜひ拝見したいと思います。

(おじょー)

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