2011年12月17日土曜日

人間失格

著:太宰 治

私がこの本をはじめて手にとったのは、ちょうど、受験勉強真っ最中でした。教科書や参考書以外の本も読まなくては、と、本屋をめぐっていたところ、実写映画の主演になった生田斗真の表紙に惹かれ、購入してしまいました。(笑)

本の内容は、「大金持ちの息子、頭脳明晰、容姿端麗」という何とも恵まれた境遇で育った、主人公・大庭葉蔵の、輝き、そして堕落していく人生を描いています。

文章は難解な単語や言い回しが多かったり、一文がとても長かったり、読みきるまで時間はかなりかかりました。しかし、文章全体に、悲しみ・深い欲望・狂気がうまく散りばめられていて、雰囲気にのめりこまされてしまいます。実際、読み終わった後も世界観から抜け出せず、しばらく陰気なきもちで。また、表現が現代ではあまり使わないものが多く、暗い美しさをうまく醸し出しています。

結末は、詳しく言えないですが、ハッピーエンドではありません。私にとっては、とても後味悪い結末でした。ただ、普通のバッドエンドと一味違うのは、「主人公・大庭葉蔵にとっては、はたしてそれはバッドエンドだったのか・・・?」と考えてしまうところ。


この本は人間について深く描いた作品の中で、至高のものだと思います。
題名の、人間「失格」とは。
どういう人間が、失格なのでしょうか?

ぜひぜひ、手に取ってみてください!

(ごし)

未来いそっぷ

著:星 新一

この本は、私の大好きな星新一さんの作品のなかでも、とくにお気に入りの1冊です。

シンデレラ、アリとキリギリスなどの有名な童話のパロディや、ほかにも、「未来」をテーマに、ロボットやタイムマシンを題材にしたショートショートが多数おさめられています。

星新一さんのショートショートが好きなのは、ブラックな結末が多いからです。
でも、その中でもときどき感動するオチがあったり、さみしい結末もあったり・・・
まったく展開の読めない作品ばかりです。

文章もかたくるしくなく、テンポよく読めます。
表現もわかりやすく、なにより想像が膨らみやすいです。

ブラックジョークが好きな方や、どんでん返しの物語が好きな方はぜひ!

(ごし)

2011年12月9日金曜日

誰かと暮らすということ

誰かと暮らすということ
伊藤たかみ

私は普段あまり短編集を読まなくて、この本の目次を見た時に"あ~短編集か~"と思ったもののおもしろい題ばかりに興味が湧き読み始めました。

読んでみると短編にはなっているものの、すべて同じ町を拠点として少しずつ登場人物がかぶって出てきて、前の話の登場人物たちの行方も同時にわかって読んでいて楽しかったです。

本のタイトルの通り、誰かと暮らすということについて、一緒に暮らすからこそ生まれる喜びや問題、離れたからこそわかることなどいろいろな境遇におかれた人たちによって書かれています。とくに私は本の内容の半分をしめる"虫壁"とゆう変わった苗字の登場人物がとても好きになりました。苗字と同じく性格も少しひねくれて変わっているのですが、どこか共通・共感する部分がある、憎めない女性です。その"虫"を受け入れる"セージ"との会話がとてもかわいく、ほっこりすると思います。

(チャッキー)

2011年12月5日月曜日

温室デイズ

著:瀬尾まいこ

この本では2人の女子中学生徒がだんだんと崩壊していく学校と自分のやり方で向き合っていく姿が描かれている。

登場している女子生徒はとても真面目で一度自分で決めたことは突き通してしまい、当たり前のことなのだが正しいことは正しいと言い張ってしまうみちると、周りの状況を客観的に見て理解し、正しいとわかっていてもその場面場面により判断し対応する優子の異なる考えの2人の心情が主に書かれており、学生なりの戦いが書かれている。どちらの考えも人の心にはあると思うし、その心の中の葛藤がとても共感することができた。
学校の崩壊を止めること、人を変えることは難しく、何が正しくて何が正しくないのかわからないこともあるが、行動することで少しずつだが学校生活や人を変えることはできるとゆう最後には頑張ろう!と思わせてくれる作品だった。

(チャッキー)

2011年11月9日水曜日

ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと

今回読んだ本は
鎌田 洋さんの 『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』 です。
本屋さんに本を見に行ったとき 「すべてはゲストのために」や「サービスを超える働き方」などの、本の表紙に書かれた言葉を見て、いかにも観光学部生が読むっぽい内容だと思い、読みはじめました。
ディズニーの系列の本はたくさん出ていますが、パッと見の判断で特に興味を持ったものが今回の本でした。

アメリカのディズニーランドで働く、「夜の清掃部隊」のチャック・ボヤージンさんのお話です。
ウォルト・ディズニーが心から信頼し、多くのキャストからも信頼され、「そうじの神様」と呼ばれていたそうです。
夢の国に期待を寄せて就職してきた人々が「掃除部」に配属させられ、不満ややりがいを感じない気持ちを持っていたのに、チャックさんと出会ったことで、掃除にたいする気持ちや自分たちがどれほどディズニーランドにとって大切であるかを実感していくような内容でした。
掃除部の研修生に言ったチャックさんの言葉で

「僕はね、子どもが床にポップコーンを落としても、躊躇なく拾って食べれるくらい、床をきれいにしてほしいんだ。」

という言葉が印象的でした。
観光学部に入学して以来、ディズニーランドがサービス精神溢れる所だということは学んだのですが、ディズニーの本を1冊1冊と読むたびに、ここまで徹底しているものかと思います。
夢の国では、掃除係もエンターテイナーらしいです。
今では清掃部がディズニー就職希望1位をとっているそうで、掃除までもが夢の国では「夢」なんだと実感させられました。

ディズニーランドの経営や経済力、社会に与える変化や影響など、すごい力を持っているのが改めてわかりました。
ディズニーランドはそこだけが本当に異世界なんですね。

(もも)

2011年11月2日水曜日

世界がもし100人の村だったら3 たべもの編

「世界がもし100人の村だったら」という本は、皆さんすでに読んでいるか、名前くらいは聞いたことある方が多いのではないでしょうか。その本のシリーズ3作目が図書館で目に付いたので読んでみました。

私が印象に残ったのは、“村びと100人のうち16人は、1年を110万円以上で暮らし、いろいろなものをたくさん食べています。 (中略)41人は、1年を8万円以下で暮らし、ときどきしかたべられません。そのうち12人は戦争や、干ばつや洪水や砂漠化のためにいつもお腹をすかせています。”というところです。世界を100人にしてみると、なんと41人という半数弱の人間が、安定して食料や栄養を得ていないということになります。もし自分がすでに空腹を満たし、さらに両手に余るほどの食糧を持ち得ているとします。そのとき、自分の目の前に食べ物に飢えた人がいるならば、その食糧を差し出すという選択をするのが多数派なのではないでしょうか。目の前のことには気が付き、放っておけないはずです。しかし、世界のこと、地球の反対側で起こっていることとなると疎くなってしまうのは何故でしょう。栄養が不足して死んでしまう人々がいることを知りながら、毎日食べ残しを何トンと廃棄してしまうのは何故でしょう。食糧というものは命のもとです。それがなければ生きていけないのです。今の時代はグローバル化やボーダーレス化と言われますが、世界中が仲良く手を取り合い生きていける世界ではありません。とうとう世界の人口が70億人を突破した今、食糧の問題は、これから環境やその他の重要な課題と同時に、人類全体の問題として解決していくべきことだと思いました。食べ物は大切です。

(あっきー)

2011年10月31日月曜日

他人事

著:平山夢明

私は2年くらい前にこの人の本に出会い、先日生協の購買でこの本を見つけたので
買いました。
この人の作品はなんというか非常に不快です。
残酷だったり理不尽だったり確実に一般受けはしないと思います。
この「他人事」は14編からなる短編集です。
あらすじはいちいち書くと長いので省きますが、どれもこれもいい意味で非常に悪質で面白いです。
中にはただひたすら女性が若者二人にリンチされて殺される話もあります。
殴る描写ひとつにしても細かくリアルで映像がどんどん頭をよぎります。
オチが読めたりなんとなく展開の予想できる話も多いのですが、そこまでもっていく描写がいちいちえげつない。
人間の狂気とか恐怖をここまで書ける人は少ないと思います。
他の作品もそうですが読むのに根性がいります。
面白いというと楽しんで読んでいる感じがしますが、この作品は怖いものみたさというか、どうしてもカサブタを剥がしたいときのような・・・。
ダメなのに気持ち悪いのに見てしまうそんな面白さだと思います。

(いっちー)

告白

私が今回読んだのは、作者 湊かなえさんの「告白」です。
この本は私的に一言で言うと『現代らしい』内容だったと思います。
4歳の娘を、自分の掛け持つクラスの生徒2人に殺された先生の語りをメインとして
語り手が『犯人である生徒2人』『犯人の家族』など、次々に変わって進んでいく形でした。
友達の裏切りや事件、先生からの復讐が原因でひきこもりになってしまった上に、過保護でそんな息子のことを理解している<つもり>の母親と不安定な息子の気持ちの擦れ違いが起こり、結局息子のために心中を決意した母親までもを殺してしまう犯人の1人。
もう1人の犯人は、幼い時に自分のもとを離れていった研究家の母と会うために 自分で発明した作品で大きな事件を起こそうとして数々の計画を立てるのですが、最後は先生の復讐が混じって、自分の発明品で会いたかった母親を殺してしまう・・・
などなど
まだ他の語り手がいて、どんどん違う方向から全体像が浮かび上がってくる感じでした。
とても暗い内容です!!
でも、私はハラハラしながらこの内容をおもしろく読めました。
たまに見るニュースの事件を、リアルタイムで自分が事件が起こるまでの一部始終を関わりながら見ているような感覚になりました。


なかなかおもしろかったんですが、さすがに次もこのような内容の本を読むのは気分が下がってしまいそうです。
なので、次はもう少し明るい内容に手を付けようかなと思います!!

(もも)

2011年10月25日火曜日

六番目の小夜子

著:恩田陸

中学生時代からずっと家にあった本ですが、題名の印象から勝手にホラー小説だと思っていたため、ずっと避けていた本です。
けれど有名な作品ですし、この機会に読もうと手に取りました。読んでみて確かに単純にホラー小説ではないことは分かりました。
けれど暗い夜道を一人で歩いている時のようなじわじわとくる恐怖感を感じさせるシーンが何度かあり、怖いものが苦手な私には十分なダメージを与える作品でした。
同時に謎が多く残った作品です。説明がつかない出来事も多くて、大概の小説の様に最後の方にわかりやすく事実を書いてる訳でもありません。
そのため想像力が豊かで、色々な可能性を自分で考える事が好きな人にはおすすめの本です。
そして最後まで次に何が起こるか予測ができないような展開で、途中で読むのをやめさせてくれませんでした。そのため多くの人を惹きつける作品ですが。、
終わり方は好き嫌いが分かれると思います。私は起こった事実をストレートに書いてほしい読者なので、そういった点では少し不満の残る作品でした。

(DAN)

2011年10月24日月曜日

"it"と呼ばれた子

作者は自分が実の母親に虐待を受けていました。初めに、もし私なら母親を憎むと思いますが、作者は大人になった今もこころのどこかで母親に認めてほしい、抱きしめられたい、と思っているということが伝わってきました。次に、虐待する親は子供が憎くて虐待するわけではないということもこの本を読んで気づいたことです。この主人公の母親の場合では、夫が彼女の親友と浮気していたことにあったそうです。このように、子供が憎いというよりは、何かほかに都合の悪いことが起きてしまい、自分よりも弱い子供に八つ当たりしていることもよくあるのかもしれません。最後に、虐待は繰り返される可能性が高いということです。子供をなぜ虐待したのかと聞かれて、自分も親にされたからと答える親も多いそうです。虐待の苦しみを知りながら、なぜ同じ苦しみを子供に与えてしまうのか、私には理解できません。

いろいろ原因はあると思いますが、一番愛されたいと思っている親に子供が虐待を受けるなんて、あってはいけないことです。この本を読んで、この思いが一層強まりました。

(ひろ)